2014年5月20日火曜日

BRM517 宮城 300km 最上川 顛末記

 はいどうもこんにちは、漬物でーす。誰にかまれたわけでもないのですが、小指のしびれが取れませんねえハッハッハ。



 悪天候に苛まれたBRM517 宮城 300km 最上川。今回は一人で参加となりました。やー、本当に、いろいろな意味でキツかった。



「なんでこんなことやってるんだっけ」
「ブルベって楽しくないよね」
「実力が足りないってことだよな」



などなど、頭の中には常にネガティブなセリフでいっぱい。それでも楽しめたのは、「ネガティブなことを言うと辛さが1/3になる」と某お医者様に教えられたため。ネガティブを肯定しちゃえば楽しく走れるということがよーくわかりました。



 さて、今回はレインウェアの中に入れた iPhone が浸水するほどの雨ザーザーだったので画像はほとんどありませんが、顛末記なぞ書いてみたいと思います。

 

 天気予報をじっと見つめても、予報が変わることはもちろんない。試走スタッフのレポートに何回目を通しても、結果は同じ。あーもう、また寒いブルベかよ、とひとりごちながらもそもそと装備を変更する。

 Cannondale のモーフィスジャケットは置いていき、最初から dhb のシグナルレインジャケットを着用。空いたサドルバックのスペースにはサイクリスト御用達、おたふくインナーの長袖と速乾性の長袖のTシャツを入れておく。夜、濡れた身体で山刀伐峠を超えるのは、寒さに弱い自分にとっては自殺行為にも等しい。急場しのぎではあるけれど、100円ショップで手に入れたレインウェア下と替えの靴下、ネックウォーマーも追加。これを持っていけと奥さんが手渡してくれたホッカイロもありがたくもらっておく。


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 当日は朝3時に起床。仙台は晴れ。ただし、風は強い。今回は奥さんがスタッフカーとして各地の PC をまわるため、簡単な工具、チェーンオイル、空気入れも積み意気揚々とスタート。サンドイッチをほおばりながら寒河江を目指す。風の強さに驚きながら運転をすることしばし、たまに雨が打ち付けてくる。今日のブルベは荒れるだろうなあ。


 寒河江に到着。すでにスタッフと参加者が到着しており、それぞれ準備や作業を始めている。奥さんにスタッフ業務を任せ、自転車を組み立て、試走。そういえば、ステムを長くしてから 6km 位しか走ってない。少し股間に違和感はあるものの問題はなかろう。


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 と、駐車場で試走しているとこんなバイクが目に入って驚愕。そう、宮城 1000 でもママチャリ参加で周囲を驚かせたあの人がまたやってくれた。お値段は 70 万円ほどだそう。これで 300km 走るのか…まねできないなあ。


 ブリーフィングが始まった。


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 本日の天候にもめげずに出走したのは48名。車検後、順次スタート。車検をしながら他の方の装備を見ることができるのはスタッフの特権だろう。自分のバイクを奥さんに検査してもらう。問題なし。


 「では、行ってきます。本日はよろしくお願いします!」と、意気揚々とスタート。今回こだわったポイントは二つ。


 一つは、補給食。今まではその時食べたいものを遠慮なく食べるという方式だったが、だいたい胸やけを起こしてスピードダウンしていた。ところが、パン類のみを食べた時は胸焼けしない。よって、今回の補給食はすべてパンにする。


 もう一つは、コンビニで休憩しすぎないこと。尿意や便意については仕方がないとはいえ、疲れたから休憩しようと目に見えるコンビニに飛び込むことはしない。だいたい 30km 毎に休むためのコンビニエンスストアを事前に調査しておき、iPhone の裏に退出予定時間とともに貼り付けておいた。


 汗をかくでも息が上がるわけでもないちょうど良い速度を維持すること 40 分ほど平均時速は 23km/h 程度。150km 位までは大体 20km/h で回りたいという計画だったため、非常に快調。雨粒はまだないが、路面はかなりウェット。


 と、後輪に違和感。すわパンクか、と後輪を指で握ってみるも空気は抜けていないよう。とはいえ、タイヤが凸凹したような感覚があるんだよな。いや気のせいだ、路面が荒れてるからだろうと自分を納得させて再スタートし、坂を越えようと踏み込んだ瞬間、リムがタイヤを踏む「ぐにゅ」っとした間隔が伝わりあわててストップ。タイヤをチェックする。


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 目が点になる。なんだこれ。


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 螺子…?綺麗に踏んでしまったがゆえに空気がすぐには抜けなかったらしい。リムテープにまでダメージを与える長さには飽きれるのを通り越して笑ってしまった。


 問題はタイヤだ。これだけの大きな穴となると、チューブがにゅっと顔を出すことになってしまい、再度のパンクは必至だ。…が、こんなこともあろうかと、一応持ち歩いているレザインのスマートキットにはタイヤブートが入っている。これを貼って事なきを得た。準備って本当に大事だと実感した瞬間でもある。


 CO2インフレータもあるが、携帯ポンプで空気を入れる。5気圧程度は入っただろう。二の腕の筋肉が悲鳴を上げた。グロスは 18km/h まで落ちている。焦れる。が、強烈な尿意も収まらない。すぐ上の民家の方がいらっしゃったのでトイレを…とお願いすると「雨降ってるからそこでいいよー。かまわないからー。」とのこと。家というか倉庫というか、の所有者の方の前で粗末なものを取出し放尿する羽目に。おそらく、何人かにこの姿は目撃された気がするが、気にもしていられない。先を急ぐ。


 PC1 に到着。スタッフの方たちと「パンク大丈夫だった?」と盛り上がる。他の参加者の方向けに…と用意していた空気入れをまさか自分で使う羽目になるとは思わなかったが、後輪の空気も回復した。サンドイッチと乳酸菌飲料を飲んで急ぐ急ぐ。前半で足を使いたくはないが、仕方がない。


 向かい風は相変わらずだが、雨が、降ってきた。
 いそいそと100円ショップの頼りないレインウェア下をはき、先を急ぐ。雨はどんどんひどくなり、アイウェアが水滴でびしょびしょ、前が見えない状態にまでなった。かといって、裸眼で走るわけにもいかない。手で拭いながら黙々と進む。寒い。


 目当てにしていたコンビニに飛び込み、ゴム手袋をゲット。体温を奪われないために、靴下の上からビニール袋を着用する。日本の誇るサバイバルのエキスパートから直伝された技だ。確かそのあとはごみ袋を着用する手はずになっていたが、大丈夫、まだそこまでではない。


 時折、サポートカーである奥さんの車から「…ってー!」という声が聞こえる。おそらくがんばってーと言ってくれているのだろうが、雨音と車が跳ね上げる水の音で聞こえない。聞こえないが、応援されているのはわかる。これは嬉しい。脚もまわる。


 前半の PC は基本的に折り返しポイントがある。参加者たちと手を振りあい、お互いの健闘を称え、また、祈る。中には明らかに震えてる人、目が死んでいる人たちもいたが、それでもクランクの回転は衰えない。衰えたら最後、寒さで動けなくなるから。


 PC2 へ到着するころには全身ずぶ濡れ。私のレインウェアは確実に雨をはじいてくれるが、体内の熱と湿気を放出することはできない。いくらベンチレーションを開けたところで、ほとんど効果がないし、熱気を一緒の放出するわけにもいかない。結果、雨と自分の汗でしとどに濡れる羽目になる。反射ベストを着た濡鼠、である。


 そんな参加者たちを見て、PC2 ファミリーマート藤島店の店長さんとオーナーさんが仮設のベンチを用意してくださり、久々に椅子に座ることができた。消費期限が切れてるけれど暖かくはなるからとホッカイロの差し入れまで。これに助けられた参加者のなんと多いことか。


 ここでまたメカトラブル。ライトホルダーとして使っているミノウラのスペースマウントの根元が緩んだのかカチャカチャとうるさい。手持ちの工具では増し締めできない部位でもあるし、これ以上緩むことはないだろうとは思うのだが、仮に脱落してしまったら山刀伐峠は絶対に超えられない。よもやと思って入れておいたタイラップで補強。必要ないだろうと思って持ってこなかったらアウトだっただろう。備えあれば憂いなし。


 PC3 は宮城 1000 で池になっていたコンビニである。今回は幸いなことに水たまりレベルではあったものの、ランドヌール達が一様にため息をつきながら溜まりこんでいる。寒い。とにかく寒い。「これで…半分か」と誰かが呟いた言葉に一同うなだれる。


 近くに道の駅があり、まともな食事をとれることも知っているし、おそらくこの気温なら暖房も入っているだろうという予想はできる。いっそここで…と思いたくても、ここから寒河江までどうやって帰れというのだ。走るしかない。走るしか。


 なかなか上がらない尻をえいやっと持ち上げ、向かい風の中を青沢越。天城越えを歌いあげながら登る。このコース、山刀伐峠がクローズアップされがちだが一番きついのはこの峠である。えっちらおっちらつづら折れを登り、山を越えると、今度は左側から容赦なく、車道の中央まで持っていかれるくらいの雨風が吹き付ける。そしてルートは、この風に向かって真っすぐ走れという指示になっている。神よ…。


 おじぎ乗り、という乗り方がある。やまめ乗りという呼称のほうがメジャーではあるが、正式名称は「おじぎ」乗り。背中を丸めずまっすぐにし、ハンドルを低く遠くにして、「軸」を利用してクランクを回す乗り方なのだが、向かい風には非常に都合が良い。がむしゃらに漕がずとも、体重を移動するだけで前へ進んでくれるし、何より前面の空気抵抗が少ない。雨粒が顔にあたって痛いものの、心折れて地に足をついてしまうことはない。状況的にも体力的にもキツいけれど、これがあったから何とか乗り越えることができた。


 が。


 尻が痛い。2km 走ってはダンシング。…んんんん、もう我慢ならん。なぜ今回はこんなに痛いのか。汗や雨でシャモアクリームが流れたのか、と追加投入をしても変わらない。


 あまりやりたくはないが、サドルの高さを変えることにする。これはサドルが低すぎるのではないかとすこし高く調整。当たり前だが、さらに股間が圧迫されて痛い。そこでようやく思い出す。そうだ、ステムを長くしているのにサドルの角度を変えていない、ということに。


 Dynapack を外し、アタッチメントを緩め、サドルの角度をちょっと下げる。そんなことやってる間に何人かのランドヌールに抜かれながら何とかフィッティング。よしよし、これなら耐えられる。ここでも時間を20分ほどロス。準備は、本当に、大事だ。


 さて、次のコンビニへ。だいたい 30km ごとなので心が折れずに済むというのはとてもいいことである。…あれ?ない。ないぞ?その「コンビニ」がない。しばし呆然としつつ、首を振り振りあきらめる。PCまではたったの 20km 弱だ。カバンの中にはご褒美のホットケーキだって入ってる。大丈夫。

 寒い。雨は結局やまない。予報では確か正午くらいまで雨だったのは記憶しているんだが。神社仏閣その他史跡を見つけるたびに、雨をやませたまえ、ランドヌールを無事通過させたまえと念じるくらいの精神状態。ふと「ほう。お主は無事通過しなくてもよいのじゃな?」という声が聞こえた気がするが、それはきっと気のせい。

 PC4 到達の 5km 手前でたまらずセブンイレブンへ入る。ありがたい、暖房がきいている。チリトマトヌードルを購入し、お湯を入れる。湯気っていいよな。ぶるぶる震えながらふとポットに目をやると、設定温度は 90℃。まさか、と思って二度見。お湯の温度が低いと、いわゆるスナックめんのようなカップヌードルが出来上がるのであるが、パンしか食べていない自分にとって、暖かい湯気が上がるものが手元にあるというのは大変ありがたいこと。胸焼けが来るだろうなと苦笑をしながらもずるずるとすする。暖かい。頬を伝うのは雨なのか涙なのか、と天を見上げて気が付いた。空からの水が、やんでいる!

 PC4 はほぼ 200km 地点。ようやく到達したのはスタートから11時間後。気象条件、トラブルの頻度を考えると個人的にはかなりの速さで進んでいる。寒いだけで、体力は問題ない。関節の痛みもない。手や腕のしびれも皆無。つまり、調子は悪くないどころか、良い。あと 100km。時速 15km/h でも 7 時間で到着できる。ここから先はだらだら登って山刀伐峠を超える山岳コースを越えれば 20km くらいの下り、そして細かなアップダウンはあるけど概ね平地。完走はできる。できるはずだ。

 おもむろにヘルメットを外し、ネックウォーマーをトップチューブにかけ、レインウェアを脱ぐ。アイウェアをヘルメットの中に放り込み、水分でまとわりつくレーシャツを脱ぎ捨てる。冷気が容赦なく身体に突き刺さるが、気にせずビブショーツの肩紐を一本一本外していき、ちらっと後を見ながら「あンたも好きねェ」と呟く…なんてことはせずに黙々とインナーを脱ぎ、もってきたおたふくインナーを着る。暖かい。念のためにと速乾性の長袖Tシャツも着こみ、
装備を固める。乾いた服ってこんなに快適なのか、と感動しながら出発。次の休憩地点まで約 30km。

 だらだらと登り続けていると、暑い。せっかく乾いた衣服を着ているのにまた濡らしてしまっては意味がない、とベンチレーションを全開にし、前をはだけて登る。寒い寒いと言っていた数時間前がうそのようだ。しまいには長袖 T シャツを脱いだ。CBN を中心におたふくインナー信者が多数いるのはうなずける。濡れはするが、すぐ乾く。乾くときに気化熱を持っていくわけではなく、暖かいままに乾いていく。これは素晴らしい。

 PC5 の20kmほど手前で休止。切株で作ったベンチでコーヒーを飲みながらパンを頬張る。ジャムパンはマーガリン入りのほうがおいしい。カフェイン断ちをしていた体に流し込まれる珈琲はなかなかに強力で、妙なテンションの上がり方。頭の中に流れる音楽は、HIPS

「夜をぶっとばせ」。鼻歌を歌いながらメインライトである中華ライトと GENTOS に火を入れる。道路を2~3人のランドヌールが走って行く。さあ行こうか、同胞たちよ。Let's spend the night together, now. スリルな、もっと、夜を。

 PC5 に到着。抜きつ抜かれつしてきたランドヌール宮城のスタッフたちと合流するも、サポートカーは来ない。「スタッフカーは?」と聞かれるも、iPhone に電源を入れるのがためらわれる状況では確認のしようがない。脱いでいた長袖 T シャツを着こみ、雨ですっかり流れてしまったチェーンオイルを補充。さあ、山刀伐峠にアタックだ。

 結論から言うと、山刀伐峠は特になんということも無かった。淡々と登ったらトンネルが見え、そこを超えると幽霊で有名な公衆電話ボックスが見えた、というだけである。一応「山刀伐峠をぶった切り☆ミ」と快哉を叫んだものの、その声は山のなかに消えていくだけ。長い下りが始まる。

 ペースは申し分ない。体力も体の調子も問題がない。しいて言えば、両膝の裏側に多少の違和感があるくらいだ。初期にメカトラブルはあったが、怖いくらいに順調。好事魔多し。慎重に慎重に、と頭の中で何回も言っていたことなのにどこに油断があったのか。255km 地点で前輪にガツっと衝撃が走り、プシュシューと激しく空気が抜ける。パンクだ…ここまで来てパンク!?なんなんだよ!と怒ったところで始まらない。前回と違ってタイヤには異常なし。チューブを見てもいまいち原因がわからない。焦らずじっくり丁寧に見ていくこと5分でスネークバイトを確認。良かった、何かが刺さっていたわけではないのだな。
 ここでも何人かにパスされ、チューブ交換。時間がないわけではないが、また携帯ポンプで腕がだるくなるのは嫌だ。CO2インフレーターでパシュッと空気を入れ、チューブのバルブを閉…まらない?当然ながら先端を押せば空気が抜ける。歯を使って何とかしようとしても、この手組のホイールのスポークに入るほど小顔ではない。ペンチのような工具はない。下手に触って空気が抜けたらアウトだ。ええいままよ、とバルブキャップをかぶせると、特に空気が抜けるわけでもない。もうこれで行くしかない。ダメならレザインのパッチで修理をするしかないだろう、と暗澹たる気持ちで立ち上がり、また自転車にまたがる。ため息一つついて、また下りはじめる。

 最後の PC で確か、速攻元気的な流動食を食べた。固形物は胸焼けの可能性があったから避けたのだが、この流動食も私には合わなかった。漕げば漕ぐほどゲップが出る。水分が足りないのかと水を飲んでもマシになるわけでもなく、固形物は食べたくない。飴を舐めたら吐くだろう。

 コーラ。コーラが飲みたい。
 ゲップをしながら自販機を探すことしばし。自販機は見つけたがコーラのみ売り切れ。ふらふらと先に進むと見覚えのあるお店があり、自販機もコーラもあった。

 地べたに座りながら一気にコーラを流し込む。炭酸のせいか少しは胸焼けが収まった。誰もいないであろう店先でひときわ大きいゲップを出したところで胸焼け解消。よし行くか、というころにサポートカーが通りかかった。車でコース上を巡回するのもそれなりに疲れるのは宮城 1000 の時に経験済み。お互いの健闘を祈りながら残り 50km ほどを走る。

 もう平地だ。風もなく、雨もなく、車どおりも穏やか。何も考えずにペダルを漕げば宮城 300 認定、と。げーぷ。解消したと思った胸焼けが再発。胃腸薬を飲んで再スタート。

 胃腸薬に眠くなる成分が入っているとは寡聞にして聞いたことはない。ないのだが、ひどく眠くなり縁石に激突する寸前に足で蹴ってリカバー。ビンディングなら確実に落車してた。これはイカンと少し休む。疲れてるのかな?疲れてるだろうな、そりゃあ。

 平地は、飽きる。

 適度に山があってくれた方がどんなに楽か。などと考えながら自嘲する。山があれば平地がいいと言い、平地ばかりだと山が良いという。人間なんて勝手なものだ。PC1 だったコンビニにちょっとだけ寄ってトイレ休憩。なんとなく肺がおかしい。吸っても吸っても酸素が入って行かない感じ。あと 30km。前輪の空気はまだ大丈夫。


「なんでこんなことやってるんだっけ」

 ― 今年は SR とりたいしなあ。SR 持ってないスタッフってダメなんだっけ?


「ブルベって楽しくないよね」
 ― 不健康なスポーツ?だよなあ。辛いし苦しいし。楽しいところもたくさんあるけど。

「実力が足りないってことだよな」
 ― 足りないなー。心肺と関節と、えーとPMFストレッチとー


 などと自問自答を繰り返すこと何十回だったろうか。寒河江の商店街に入り、角を曲がり、セブンイレブンを越え、街のホットステーションが見えてくる。のろのろと自転車を置き、店内に入る。最後に何を買おうか悩みに悩んで、アサヒのドライゼロを購入。レシート時間は 23:32 分。17時間32分でのゴール。

 ちょうど他のランドヌールもいらっしゃったのでゴールをたたえあう。寒かったのだろう、味噌汁片手に笑顔を向けてくれた。私もおそらく、ニヤけていたのだろう。辛かったなあ、今回の300。じわじわ来るこの感じ、そう、これこそ ”It's Brevets!”

 ゴール受付は最上川ふるさと総合公園。そこまで約 1km はパレードランみたいなものだ。鼻歌交じりでだらだらとペダルを漕ぐ。BGM は確かゆずの栄光の掛け橋だった。そういえば、当日の朝、シャワーを浴びながら聞いてたんだっけ。熱いシャワー浴びたいなあ。いくつもの山を越えてゲットしたレシートがある。だからもう、迷わずに進めばいい。栄光のゴール受付へと。


 ゴール受付には見知った顔のランドヌール宮城のスタッフ。お帰りなさいと声をかけられ、開口一番出たセリフは「いやぁ、ひでぇ目に合いました」だった。それを見ながらもニコニコと声をかけてくれ、労わってくれる人たちがいてくれるから走り切れる。

 今回は本当に事前準備と、他のランドヌールとの触れ合いと、スタッフの笑顔と対応に助けられたブルベだった。一人で完走できたわけでは決してない。一人でも完走できる力が欲しいか…と言われれば、欲しい。けれど、欲しくない気もする。せっかくのブルベ。同じランドヌール達が走っている特別な日なんだから、いろいろな人から刺激をしたりされたりしながら、楽しく苦しく走っていきたいもんだ。




 着替え終わって―。


 軽く放心しながらゴール受付。私が後ろから8人目くらいだったらしい。それぞれの人たちがそれぞれの表情で入ってくる。自転車は一様に薄汚れ、浸水の影響で尾灯が明滅してるもの、どこで泥をかぶったんだというくらいに汚いバイク。それぞれのバイクが、それぞれのブルベを雄弁に物語っているような気すらする。ゴール受付は暇で、暇がゆえに大変な業務ではあるが、もしかしたら、一番楽しい業務なのかもしれない。最後のランドヌールを迎え、撤収。時間は0130時ごろ。こうして、BRM 517 宮城 300 最上川は終了した。参加者の皆さん、スタッフの皆さん、本当にお疲れ様でした。

 そして、この文章を読んでくれた皆さんで、ブルベ未経験の方にぜひ言いたい。


 来たれ老若男女。ブルベはこんなにも苦しく、辛く、楽しい。

8 件のコメント:

  1. そうなんですよね
    ナタギリ峠は結構名前負けなんですよね~

    PKCNは行方不明になりませんでしたかね(* ̄0 ̄)ノ

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  2. お疲れ様でしたー!!
    今年も波乱含みの宮城ブルベの開幕となりましたねー。
    SNS上でもみんな「キツイ、つらい」を連呼していてどうなるかと思いましたけど、無事に終わって何よりです。スタッフ業もあり、いろいろ大変でしょうが今年も一緒に楽しませて下さい。
    ではでは。

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  3. こさいさん
     おかげさまでpkcnは無事でございましたw 両手の小指と親指の感覚がいまだにおかしいくらいです…。
    山刀伐峠は本当に名ばかりでしたねえ。おそらくそんな感じで舐めて下ったから罰があたったんですな。
    いわんさん
     波乱万丈スタートですねー。約一か月後には400走るとか想像したくないですorz
    大きなトラブルなく終われたのは非常によかったです。また一緒に走りましょう!

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  4. 青春物語を読み終えた時のような、あるいはドキュメント映画を見終えた時のような、なんとも言えない感動に包まれています。爽やかでほろ苦くて。素晴らしい表現力とBGM。さすがです~~!!
    おんなじブルベをオイラも走れたことに、なおさら感動しちゃってます。
    きっとゴールのコンビニでは皆がにた~っとしてましたよね。
    お疲れ様でした。完走おめでとうございます!
    次回もよろしくお願いしますっつ

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  5. ゴールで味噌汁「あさげ」を飲んでいた者です。
    あのあさげは今までで飲んだどのあさげより旨かったです。(体の塩分が切れてたのかも知れませんが)
    以前より参考にさせて頂いていたブログで自分のことを
    触れて頂き嬉しいです。
    ブルベはまだ3回目のビギナーですが、これからも苦し
    愉しい!?ブルベに参加しますので、宜しくお願いします。

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  6. タンデムで参加していたものです。
    普段なら、追い風ブーストで海岸からの折り返し以降でタイムを稼げるのですが、今年はあまりその恩恵がありませんでした。それなのに午前中はやたら風が強くて最上川沿いの下りもろくに速度が乗らず・・・。そして寒い。
    このコースは味わいがあって好きです。
    また来ますのでよろしくお願いします。

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  7. おつかれさまでした。
    読んでいると先週の事がまざまざと浮かび上がってきますね。
    あの風と雨はねー。辛かったです。
    来月の400もエントリーはしました。天気に期待をしています。
    またよろしくです。

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  8. ちゃりけんさん
     お疲れ様でした!いやあ、なんとか完走しないと面目たたないなあ、なんて思いながら走ってました。
    感動するシーンもこころ震えるシーンもあったんですが、雨の記憶でかき消されちゃいました(汗
    次回もよろしくお願いします!
    さとう◎さん
     お疲れ様でした!タンデムの速さを見せつけられた思いです。お二人の仲が本当によくないとできない所業だと思いましたよ。すごいなあ…。またぜひ来てください。お待ちしております!次は生でダジャレをですね…
    Taqさん
     お疲れ様でした!
     風と雨と低気温というトリプルパンチの中、よくまあお互い走り切りましたよね。死ぬかと思いました。
    来月の400は温かいブルベだといいんですが…お待ちしておりますよ!

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