2014年6月3日火曜日

風光明媚な地獄を見れるグランフォンド飯豊を走ってきました。

 どうもー、漬物さんです。やあ、ひでぇ目にあいました(開口一番)。



 これこそ東北のグランフォンドってな感じのグランフォンド飯豊。手作りの大会とはいえ、スタッフさんの人数は多いし、きっちりと準備もされているアットホームな大会。一番の魅力はその景色。新緑と雪のコントラストが美しい飯豊連峰を見ながらふと気づくと飯豊連峰に連行されるという信号無コンビニなしのオール山岳コース。
 そして、お楽しみは完走証。なんと、笹野一刀彫、お鷹ぽっぽ。この子を家に迎えるためにお父さんは頑張ったのでした。



 スタート時点の気温はすでに25度を超えており、コースは平均斜度 7%。景色は絶品。風もそんなにない。ボクらは銀輪を携え、風光明媚すぎる地獄へ挑むのである。

 

 と、スタート地点の話をする前に、私のロードの話をしなければなるまい。


 前回 Fleche に参加した後、郵送でロードを送り返したのだが、受け取った後にチェックをしてみると変速がぐっちゃぐちゃ。そう、ディレイラーハンガーが曲がってしまったわけである。
 修正器具で何とか修正してもらったものの、ディレイラーハンガーの修正はこれで3回目。流石にそろそろ新しいやつ用意したほうがいいよ、と言われて探し回ったものの、該当するものが見つからない。噂によると代理店経由でも手に入らないらしい。最後の望みをかけていつもお世話になっているベルエキップさんにお願いしたところ、新品がきちんと手に入った。


 喜び勇んで装着し、変速を調整するも全くかみ合わない。いろいろいじくりまわして妥協できるポイントを見つけるまで2時間。実走してみると、チェーンがスプロケットとスポークの間に落ちてしまう。まーた調整地獄…というのも嫌なので、今回はディレイラーハンガー交換しないことにした。


 そして当日…。


 朝0330時に起床し、米沢へ向けて出発。奥さんお手製のおにぎりをもぐもぐやりながら一路スタート地点を目指して運転する。道中ではグランフォンド飯豊のコースプロファイルが如何にアレかが話題の中心。
 正直、なんだかんだ言いつつも完走できるだろうという気持ちはあった。風雨にさらされた宮城 300 を制覇できたんだし。ブルベ以上にキツいことなんてない―そんな思いで米沢についたのが早朝0645時。せっかくだから上杉神社に戦勝祈願へ。


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 法人会の皆さんが大勢いて、一所懸命掃除をしている中をレーパンレーシャツ姿でのしのし歩く。成せばなる 成さねばならぬ 何事も 成さぬは人の 成さぬなりけり。知っているフレーズのはずなのに妙に頭に響く。無事完走できますように、ダメそうでもなんとか家に帰れますようにと祈念してその場を後にする。


 スタート地点にはいろいろなところから来た変態さん(褒め言葉)約150人がいそいそと準備中。受付で「お、初参加ですね?がんばってください(うふふ)」と言われ、嬉しい反面、なんだかイケない場所に来てしまったような気持ちにもなり。


 ロードを組み立て、いざ試走。
 500m 走ったところでやっぱりチェーンがスプロケットの内側に落ちる。後輪がロックしあわててチェーンを引っ張り出し、再調整。再度走り出すとなんだか重い。タイヤがフレームに擦ってる。お、おいおい、マジか。


 うーん…これで 160km の山岳を走るってのは無謀以外の何物でもない。ここまで来て DNS ってのもなあ。米沢観光はとても魅力的ではあるけれど。奥様からはキシリウムエリートの後輪を使うかというオファーがあったものの、旦那としてそれはできまへん。何とか完走を。できれば二人でしたいところ。


 スポークレンチでなんとか振れ取りを試みるも、良くわからないままにスポークを捻るだけなのでどうにもならない。なんとかフレームにかすかに擦る程度まで直したところであきらめる。


 ゴトーさんとK先生、KOMAさんとご挨拶。ブリーフィングが始まり、歴戦のサイクリストがわらわらと集まって…みんな細いし速そうだし、なんつう場違いなところに来てしまったんだと後悔するのにはもう遅い。主催の星輪転の店長さんから注意事項が説明される。


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 なんじゃそりゃ、と会場にはてなマークが埋め尽くされた注意事項は「無銭飲食の禁止」。グランフォンド飯豊では3か所のエイドポイントがあるのだが、参加者でもないのにそこに来てパンを強奪する奴がいる、とのこと。チームジャージ着たまましれっとやる人がいるらしい…というか、結果から言うと、今年も現れたとのこと。オレンジ色のジャージだったって話ですけどね。パンすら買えないくらいなら自転車なんか乗ってんじゃないよ。働け。



 16人ずつのウェーブスタート。第一陣はレディースの皆さん。奥様もちょーんといらっしゃいましてえらく不安そう。


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 ランドヌール宮城のスタッフでもある K さんがおとなり。K さんに喰いついていけるようがんばるとは奥様の言。足切チェックで落ち合おうと約束し、元気に?スタートしていった。


 遅れること8分後、私もスタート。数m走った後に「後輪振れてますけど大丈夫ッスか」などと声をかけられ、ありがたいやら悲しいやら。シュッシュッとかすかに擦れる音がするのでバーストするのも時間の問題じゃないかなあ、などと思いながら走る。DNS が主催の方にも迷惑をかけない最良の選択であるとは分かっていつつも、走りきれれば問題はないんだよね、とナメた思考回路は我ながら不遜であるなあ。


 最初の市街地には信号や踏切が若干あるのでパチリ。皆さん良い笑顔。


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 走ればすぐに山岳地帯。見てよこの絶景。


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 風もなく、気温は高いけど不快なくらいではない。絶好の自転車日和。山岳は嫌いだけど山の空気はすきなのよね、とふんふん鼻歌交じりで飛ばす。宮城1000のスタッフでご一緒した英語堪能なNさんややまめの学校でお会いしたHさんたちとかるーくお話ししながら進む。


 最初の峠を越えると、第一チェックポイント兼第一エイドステーション。


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 ジャムパンが体にしみる!


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 一つ食べてもまだ空腹感があったので、もう一つイイですかーと聞いたところ帰りもここでエイドしているから、それを楽しみにしていてねとのこと。…うーん、ヤバい、手持ちの食料で足りるだろうか。


 すきっ腹を抱えながら第二チェックポイント、つまり、脚きりポイントへ向かう。平均6.7% と 5.6% の峠を越えて 32.7km 先へ行かなければならない。気温もだいぶ上がってきた。さぁて行けるかな?


 九才峠を越えた段階で計算すると、いろいろおかしい。いやちょっと待て、これどう考えても間に合わない。周りは意外に余裕そうだけど、山のてっぺんが足切ポイント。平地で稼がないと、山岳が苦手な私は絶対に間に合わない。


 錆びた貨車が現れるポイントまでは若干下り基調だったはず。これは行くしかない、と明らかに私より早そうな人たちを抜いて 40km/h で巡航。ブラケットの出っ張りを握り、腕をハンドルに置く簡易TTポジション。通勤車両がちょうどそれくらいのポジションなので逆に調子が良いんだけど、長くは持たない。


 山岳に入る手前で後続の方にぶち抜かれる。平均勾配 5.6% とはいうものの、内訳はこうなってる。


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 なんとかくるくると脚を回して。このころからケツが痛くなってきたのだが、構ってなんかいられない。ぎらぎらと照りつける太陽を恨みながらくるくるくるくる…。


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 11時5分前になんとか滑り込む。ひぃひぃ。水が、水が足りない。補給して、塩サプリを飲んで、ようやく一息つく。なんてこった、絶景じゃないか。


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 ランドヌール宮城のスタッフでもある K さんはご夫妻で参加なのです。健脚というのはこの人たちのためにある言葉だよなあ。そろそろ出ようかな、というときにお会いできて開口一番「奥さんは?すててきたの?」と聞かれてしまう始末。「いいいいや違うんです」「冷たいダンナだねえ!(爆笑」などという会話をしつつスタート。ちなみにK旦那さんは超紳士的なライダーで、奥様と必ず一緒にゴール。我々もかくありたいものです。


 先に行くよ、というメールも届かない世界なので、冷たいダンナは先を急ぐ。


 眼前には飯豊連峰。緑と白のコントラストが美しいのだけど、方向音痴かつ地理が壊滅的な私はまさかあそこに上ることになるなんて思ってもいなかったのだ。


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 はい、近づくとこうなりまーす。


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 第三チェックは1206時着。水が枯渇しており、その直前に湧水があるってことなのでそこで補給。ここではえいようかん、塩サプリ、飴各種をしゃぶる。なんにせよ、腹が減った。空腹感が半端ない。


 かてて加えて、肺がおかしい。呼吸してもしても酸素が入って行かない感じ。少し休めば落ち着くし、心拍数をあげなければなんとかなるだろう、とだましだまし坂を下りる。


 あの坂を登れば第四チェックポイント兼エイドステーションが見える(cf. 『あの坂を登れば』)と念じながら樽口峠をクリア。1257時。う、またジャムパンか…と思いきや、トマトあり、梅干ありとグレードアップ。梅干は本当にありがたかった。塩分が足りなさすぎる。東北人には塩が必要なんだぜと思いながら美味しくいただく。


 仙台は Proton のジャージを着た方としばし歓談。ストイックよねーと話しながらも元気そうな彼。私はどっちかっていうとゲンナリ。でも、この景色。


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 はあはあ言いながらまた坂を下る。流石にもうダメ。DNF したい。息は上がりっぱなしだし腹は減ったし木陰はないし…と下って、今度は百子沢峠にアタック。10%、14%の斜度にたまらず押し歩き。歩いているだけでハァハァ。参加者の皆さんに心配されながら這う這うの体で峠越え。そして下ったところに待望の木陰!


 倒れるように路肩へ自転車を止め、ひっくり返る。近くにスタッフの方がいて水場があるとのことなのでありがたくお水をいただく。頭にひっかぶると少し回復…ってこれはあれか、熱中症か。


 しばし寝転がってみるものの、参加者の皆さんに心配されまくるのも忍びなくて起き上がる。水を口に含んで、頭にかけて。亡くなった水を補給しようかとおもっていると地元のご家族が水をくみに来ていた。


 「おいしいですよー」「遠慮なくいただきまーす」「どこからきたんですか?」「米沢からです」「「ヨネザワ!?」」「え、ええ。で、いまからまた米沢にかえります」「どこ通って!?」「えーと、極楽峠を越えて九才峠を越えて、あと何個か超えて…」「はあ…」「馬鹿ですよねー」「馬鹿っていうか、やー、うん、自転車バカよね」などと明るい笑いを振りまき、再出発。ご家族に励まされたおかげでかなり精神的には回復。そうだ、お鷹ぽっぽを家に連れて帰らねばならぬ。


 そもそもなんでグランフォンド飯豊にエントリーしたのか、と言われれば理由は一つ。お鷹ぽっぽを連れて帰るため。実は我が家には奥さんが実家から持ってきたお鷹ぽっぽがいるのです。その子に連れ合いが居てもいいじゃない―というのがその理由。笹野一刀彫のキリッとした子なら文句はなかろう。と、見合い相手を押しつけるオバサンよろしく出走したわけである。


 とはいうものの、体の回復には至らない。極楽峠、九才峠はほぼ歩きでクリアー。足が攣り始め、乗ってられない。2RUNや電解質サプリを飲みながら、ひたすらに歩く。このあたりでメイドさん学科自転車部ジャージを見た気がする。そのあとは、福島市のキャラクターである「ももりん」ジャージを見ながらよろよろと第5チェック兼エイドステーションを目指す。お腹減った。水分足りない。自販機で炭酸でも飲めば気もまぎれたろうに、なんで俺は財布を持ってこなかった…。



 1550時にようやく第五チェックポイントに到着。


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 ま、またジャムパンか…美味しいんだよ、これ。おいしいんだけど、今欲しいのは塩分なんだ。梅干をまた頂き、食べたくはないけれど食べなければ持たないから、とジャムパンとバナナを無理やり押し込む。あいにーど塩分。なぜなら…


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 お分かりいただけるだろうか。皮膚の上で汗の塩分が結晶化するほどの状況。下の水場で頭と顔と腕を洗い、最後の 30km に挑む。たったの 30km。あと2時間。超余裕、のはずなのだが、なんでこんなに遠く感じるんだろう。たったの 30km だよ?


 菅沼峠を何とかパスするも、足が攣って仕方がない。玉庭峠も歩いてクリア。腹減った。腹が減った。メイタンの赤をしゃぶりながらなんとかならんもんかなあと一人ごちる。甘草芍薬等も持ってきてないし。何やってんだ。あんだけ事前調査でキツイってわかってるのにこの準備不足は致命的を通り越して阿呆の所業である。


 米沢まであと11kmという標識が見えて、徐々に道が街になって行く。跨線橋を越えた時、なんでこんなことやってんだ俺は。腹が減った。辛い。奥さんは無事に帰ったのかといろんな感情がごちゃ混ぜになってほんの少しだけ泣いた。本当にきついし、装備だけじゃないいろいろな準備不足が情けない。


 信号が現れ、見覚えのある街並みが見えて、なんだかよくわからないうちにゴール。お鷹ぽっぽを受け取って、凄く喜んだのを覚えてる。やったよ、やったよー!とおっさんが叫ぶ姿はさぞ奇異だったに違いない(苦笑


 奥様は会場にいた。
 「うぉーい、取ったどー」「おかえり!よくやったね!」「無事で良かったよ、心配したー」「よくまあゴールしたねえ!」などという会話を一通り終えてがっくり。「お腹減った…コーラ飲みたい…」


 総合公園の自販機の前にどっかりと座りこんでコーラを流し込み、人目をはばからずげーぷ、と一発。いやあ、本当にキツかった。でもまあ、歩いたけど、走り切れた。制限時間的には結構余裕だった。うん、と徐々に嬉しい気持ちがわき上がるものの、この心配の弱さと足が攣るポジションはまずいな、と反省する気持ちも大きい。


 うーむ。でもまあ、いまはいいや。お弁当食べてひとっ風呂浴びて、仙台に帰ろう。来年も出たいか、と言われれば苦笑いしかできないけれど、いつか「グランフォンド飯豊?アレはいいよー、景色最高だし、自分の実力もわかるし」なんてドヤ顔で語れるようになりたい。


 最後にスタッフの皆さんにご挨拶。やあ、本当に貴重な体験をさせていただいた。イベントの企画立案からスタッフの手配、食事の手配などなど本当に大変だったと思う。感謝。感謝。


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 しかし素晴らしい大会だった。写真なんかじゃ決して伝わらない景色、スタッフの皆さんの御苦労や気遣い、同じ参加者たちの悲喜こもごも、出会い。すべてが極上の体験だった。すこし思い上がっていた自分にはいい刺激だったなあ、と本当に思う。来年の開催、心より楽しみにしております。


 そして、私の自転車は入院。退院は今週中とのことで…トホホ。いつも一番迷惑をかけてるのは私の Cayo ちゃんであることは間違いないなあ。



2 件のコメント:

  1. お疲れさまでした。「ひでぇ目」に逢われていたようで(><;)
    ブルベもこなす漬物さんもつらかったのですね、、
    ロングライドにあこがれ、あれこれ頑張っております。ちょくちょく訪問させていただきますね。

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  2. おつかれさまでしたー!
    私はブルベをこなす人たちの中では下の下な実力しか持ってませんので、非常につらかったです。
    でも、スタッフさんの明るい笑顔や今思い出してもおいしかったあのジャムパン、いい熟れ具合のバナナやトマトを思い出すと辛い辛いと我儘いう自分のほうがアレだなあ、なんて思います(恥
    私もロングライドに憧れて頑張ってます。いろいろと教えてくださいませー。

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