2015年7月22日水曜日

BRM718宮城600 フラット600栗駒石巻 完走記(1)


 はいどうも、漬物さんですどうもどうも。
 ブルベ終わってから早 2 日たっていますが、未だにボクの食道は機能してくれていません。体重は 68.9kg → 64.4kg と約 5kg 減りました。過酷でした。ええ、過酷でした。今回からしばらく、レポートを書いていきたいと思います。

 ちなみに今回のレポートは以下のような感じですので、タイミングを良く見計らってからお読みください。

・ 写真はほぼありません(精神的余裕がありませんでした)
・ 記憶があやふやな個所があります
・ 文中、お食事時に読むのはどうかと思われる事件もございます
・ 完走後のお話は若干 R18 な要素も含みます





 思い返せば2年前。200km を2回しか走ったことがなく、400km を DNF しただけという経験も知識も少ない状態での参加。300km ちょっと言ったあたりで精神的に疲弊してDNF
 そして去年。400km は完走済みで何とかなんじゃね?という慢心状態での参加。雨がやんだり振ったり、気温も思いの他あがらずにゆっくり寝ることもできず、最終 PC でタイムアウト


 そして3年目、三回目の挑戦。


 天気予報は曇り時々雨とのこと。この季節のこの天候は、ある意味天恵でもあり、典型でもある。アホほど獲得標高のあるコースなので、気温はなるべく上がらないほうがいいし、夜も下がらないほうがいい。つまり、曇というのはブルベにとってはベストコンディションといえなくもない。まさに、理想的なお天気。

 今回も愛車 FOCUS Cayo2.0 に、最近ランドヌール宮城の中でも私の代名詞となりつつあるダイナパックDXを装着したマシンで挑戦。マシンの状態も、エンジンの状態も悪くはない。とびぬけていいのは精神状態。「キッツいコースだけど走り切れるってw」という謎の自信。普段のジテツウ20km とグランフォンド飯豊のメディオフォンドでいい成績上げたというのがその根拠なのか、直前に定義山にお参りに行ったのが効いているのかはわからない。

 常連の皆さんとちょこちょこと会話。みんなして「フラットってなによー」という話題。YO-TAさんとふたりで苦笑いしているとがんちょさんやみつるさん、ろんぐらいだぁすモデルを駆るたくさん等々続々と集まってきた。

 ブリーフィングが始まる。今年の 600 は例年の 2 倍程度の 49 名が出走とのこと。みんな速そう。


 R宮城らしく、オーディナリーあり、リカンベントあり、ミニベロあり、非UCIフレームあり。ブリーフィングが終わると車検を何台か行い、自分のものは奥様にしてもらってから出発。直筆のサインは幸運のお守りなのである。

 いざ出発。

 いつもの通り踏切を越えていきなりのヒルクライム。まず目指すのは 24.9km 先の温湯山荘。通過チェックである栗駒山荘前の最後の自販機になるはずである。
 最初から飛ばさず、ゆっくりゆっくりと言い聞かせながらも気は逸る。山としては、この栗駒山が最大の難所なのでここで時間をかけたくはないという思いとの戦い。

 ではあるのだが、早速暑い。気温が高いのに霧雨のようなものが降っているもんだから不快指数は 100% を越えてあまりある。余裕な表情を見せるがんちょさんと喋りながら温湯山荘着。


 トイレを済ませ、麦茶で休憩。調子はいいが、暑い。温度と言うより湿気が否応なく全身をつつむため、走っていても止まっていても全く涼しくない、が、冷たい麦茶が身体を冷やしてくれるのはありがたい。

 休憩中に何人かにパスされるも、別に気にしない。最後尾であろうとなんであろうと、タイムアウトせずゴールに着ければいいのだ。

 鼻歌交じりで栗駒山荘へアタック開始。54.7km地点。目標到達タイムは09:00。


 確かにキツかったけれど、前半と言うこともあってさほどペースダウンすることなく到着したのは08:17。目標よりずっと早い。スタッフが自腹で用意してくれた水やお菓子をいただき、即座にスタート。とにもかくにも PC1 にたどり着いて、目標やクローズ時間からどれくらいの貯金を得られているのかを確認したかったからだ。

 しかし、栗駒山荘からちょっと登ったところでは脚をとめざるを得なかった。


 あたしゃ雲の上にまできちゃったのかい。雲海だよ。窓越しとかではなく、肉眼で見るのはもしかしたら初めてじゃないか。こんな高度まで自転車で登ってきたのか。ばっかじゃないの俺…でもスゲエ!と子供みたいに放心したりして。これからこの雲をずぼっと突き抜けて下るのか。俺ぁわくわくしてきたぞ!

 コースマップを見る限り、ここから PC1 まではずーっと下り。サドルにどっかり座ってサボってればそのうち PC に着く…わけもなく、ちょこちょこと漕いだりダンシングしたり。がんちょさんが雲にダイブしそうになったのは本人の名誉のためにも黙っておいた方がよさそうだ。

 雲の中を下るということは、当たり前のように湿気の中を通るということになり。あっという間に自分の汗と水滴で水の滴る良いオトコとなる。ひぃひぃ言いながら PC1 に到着したのは10:23。クローズ時間に比べれば1時間20分以上の貯金ができたことになる。これなら、夜に風呂も入って仮眠もして、なんてことができるかもしれない、が、今はまず補給だ!

 補給食に関しては準備編4で書いていたものに従って摂取する。冷しとろろそば、トマトジュース、焼き鳥。この準備編4の記事はある側面では間違ってはいない、が、殊ブルベにおいては地獄を招く悪魔のささやきであることに気づかされたのはもうちょっと後の事なのであった。

 補給食を食べていると、挙動不審な見慣れた車両が。いやまさか…なんて思っていたら案の定、宮城ブルベにも良く出ている O さん。偶然近くまで来ていたらしく、ちょっとおしゃべり。ハプニング的な応援というのはかなり嬉しいものです。

 膨らんだお腹をさすりながら PC1 を出発。31km 先のコンビニを経由して 60km 先の PC2 を目指します。気温は変わらず、湿度も変わらず。つまり、茹だるような蒸し暑さのまま。これから太陽が中天を指せばさらに気温が上がるだろうことが心配。

 補給ポイント、PC2 と順調にコマを進め 160.3km 地点。フラットな区間のため、貯金は少し増えて2時間。とにかく暑い。じりじりと肌を焼くような暑さではなく、湿気ベースの暑さがこんなに応えるとは。いっそアームカバーとレッグカバーを外してしまえば楽になるのではないか…というのは罠でしかないということをグランフォンド飯豊できっちり学んでいる。頭から冷水をかぶり、顔を洗い、日焼け止めを塗る。日焼けが体力を奪うといっても、微々たるもんだろ、と思っていた時代もあったのだけどね。日が出ている間は女子力高めで美白にこだわって走って行く所存。


 皆さんこの時点では元気パンパン。食事を楽しんだり談笑している姿を見ることができました。来た人にお疲れ様でーす、出発する人にいってらっしゃいっ!と声掛けしたりしているのを珍しそうに見られたような気がするのだけど、な、なして…?


 次は PC3 の 243.3km 地点。第二の難所、仙人峠を越えることになる。休憩ポイントは2つではあるが、あまりの暑さに耐えられず予定外の休憩をとる羽目に。食欲は全く衰えていないので、例の記事に従って梅おにぎりとみそ汁。かち割り氷に水を購入し、ボトルに補給を行う。だいたい 10km 毎に塩飴やBCAA飴等々は舐めているものの、塩分はやはり欲しい。

 200km 地点を 10 時間半で通過。おそらく自己ベスト。栗駒山を含んでこの時間で走り切れるんなら調子がいいってことである。イケる。イケるぞ。

 仙人峠は…このコースにおけるご褒美と言ってもいいかもしれない。さほどの斜度はなく、脚に負荷をかけずに上ることができ、最後は長い下り。長いトンネルという恐怖感はあるものの、道はよく、スピードもでる。何より涼しい。「ヒャッハー!」とトンネルを飛び出すとあっという間に曇るアイウェア。流石に危ないとトンネル出口で停車。しっかり冷やされたアイウェアと仙人峠の湿気で吹いても拭いても前が見えない。ったくしょうがねえなあ…と一人ごちながら水滴が取れるのを待っているとパラパラと雨が降ってきた。雨ブルベの始まりだ。

 この雨は私にとって福音だった。いそいそとダイナパック DX からモンベルのサイクルレインジャケットを取り出して着込む。高いけれど性能は折り紙つき。パラパラからザーザーに変わった雨水は通さず、かつ、身体から出る湿気は外に出してくれる。これなら長いダウンヒルでも身体を冷やしすぎることはないだろう。

 5km ほど下ると、今まで暑さしか感じていなかったが、少しだけ寒さを感じるほどになってきた。危険にならない程度にクランクを回して体を温めながら PC3 へとアプローチ。街中の道路のわだちには 3cm ほどの水たまり。これをタイヤでざぶざぶ切りながら走るが、雨の冷気 > 体の熱気になってきているのを感じられるほどになってきた。おそらく、雨具を着ていなかったら寒さでブルブル震えていたかもしれない。

 243.3km、PC3には 18:17 ほどに到着。ずぶ濡れのランドヌールがそこかしこで思い思いに補給している。雨に濡れたカッパを着たまま店内に入らざるを得なかったためか、バイトのお兄さんの態度がとげとげしい。あー、やっぱり事前に連絡しておくべきだったかな、と反省。貯金はクローズから 3 時間。雨に降られた割には素晴らしい成績である。

 これほどの雨だと、休めば休むだけ寒くなってしまう。前回同様梅おにぎりとみそ汁で体温を維持。これから夜戦になるため、体温を奪わない工夫をちょいちょいっと。


 靴下の上からビニールを穿く。これで足から体温が逃げることもないし、体温を持った靴下がバッファとなって脚がすぐに冷たくなることも無くなるというソリューション。日本を守るサバイバルのエキスパートから教えていただいた方法。

 出発から11時間。次のポイントは 293.0km 地点の湯屋処まつばらを予定しており、貯金も十分。ここから先はリアス式なアップダウンに加えて三陸トンネルを攻略しなければならないし、そも、湯屋処まつばらは浜磯街道のてっぺんにある。昼に暑さであれだけやられて、今、雨で寒さにやられるとすれば、ひとっプロ浴びるにはちょうどいいかもしれないよね。

 雨にけぶる道を見ながらよっこらせっとサドルにまたがる。お風呂に入れる!服を乾かせる!というニンジンを目の前にぶら下げてクランクを回し続ける。

 登りはまあ、普通につらいだけであるので問題がないが、下りが怖い。
 急に気温が下がったこともあり、雨と霧の連合軍が攻めてくる。何も見えない。ライトの光量が足りないとかそういう問題じゃない。乱反射して何も見えないなかをゆっくりかつペースを落とさないように何とか降りる。あと数キロ。この坂を登れば湯屋が見えると念じつつ何人かのランドヌールと共に上る。「この先直ぐに銭湯あるから休めるッすよ!」と声をかけながら、久々に見るビカビカした灯りを目指してダンシング。眠いんだよ俺ぁ。

 目標時間の1時間前に到着できたので、まっすぐコインランドリーに向かい、全装備をキャストオフして乾燥機にぶちこむ。ノーパンにレインパンツ。素肌にレインジャケット。いわゆる一つの変態であるが、そんなことは気にしてられない。受付に行って両替してもらって30分の乾燥。その間にシャワーで汗を流す。水ぶろにつかって汗かかないようにして、身体とレインウェアを拭く。コインランドリーから服を回収して再装着。乾いた服ってそれだけで気持ちいいよね。

 よし寝るぞ!と思ったものの、お風呂に入って小ざっぱりしたらさほど眠気もない。仮眠室は別料金。暗くないと寝られないのだが、背に腹は代えられない。明るいロビーのソファーをお借りして横になってみたけれど眠れたのはせいぜい5分。それでも、再起動するには十分だった。

 外に出て、疲労回復に、と干し梅を食べると、ビリビリビリという痛みが食道に走る。うわ、結構ダメージ受けてるなあ。干し梅ごとき消化するのに薬に頼るってのは…と太田胃酸を服用せず。ここまでに7包は飲んでるはずだし、連用はそもそもしちゃダメなことになっている。

 さて出発だ。
 雨はほとんどやんでおり、霧もどうやら晴れたみたいだ。いざダウンヒル…はじめてミスコースの恐怖がよぎる。スーパーアタック奥志賀でミスコースして以来、休憩後や長すぎるダウンヒルでは途中で必ず一回止まる癖がついてしまった。何度も etrex30 を確認し、間違ってないことを確認する。だいじょうぶ。こっちでいい。大丈夫だと言い聞かせながら飴で心と体の栄養補給。

 ビリビリビリ。
 食道が焼ける。なんだこれ。水を口に含む。一瞬痛みは治まるが数分後にはまた不快感と痛み。たまらず太田胃酸を飲むととりあえずは治まってくれる。本当にいい薬。私にとっては神薬といって過言ではない。

 ここから少し、記憶がない。止んだと思った雨はしつこくしとしとと降り続く。補給ポイントでは仮設店舗の店長さんと震災の話やブルベの話で思いのほか話し込んでしまい、太田胃酸を飲むタイミングを失う。その後、食道というか、胃の入り口を焼かれる感覚に苛まれながら PC4 に到着したらしい。たしかレッドブルを飲み、さらに食道を傷つけてしまったことを覚えている。スタッフの S さんとYO-TAさんと何かを会話した。そうそう、ダイナパックだから漬物さんだと思ったっていう話だ。そこで何を食べたかは覚えていない。覚えているのは、胃に何かを入れると食道がやけるということ。その痛みは近年まれにみるくらいの鋭さであり、完走に黄色信号がついた、という事だった。

 残りたったの 266.3km なのに。コンビニ不毛地帯とコバルトラインさえ抜ければ何とかなるはずなのに。

 どうなる、どうする。
 行くしかない。ここで DNF したって脱出なんかできない。女川までは何としても行かなくちゃいけないのである。

 気づけば雨は晴れている。さあ、ここからが正念場だ。

(続く)
 

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