2015年1月19日月曜日

BRM117 千葉 200 フラワーライン DNF 記


 はいどうも、漬物さんです。
 タイトル通り、やらかしてしまいました。まさか 200km で DNF することになろうとは思ってもいませんでしたよ。いったい何があったのか、というのは下記で詳しくお話しいたしますが、なんでしょうね、簡単なブルベってのはないんですねえ…。

 しかし、コースは素晴らしく。房総半島の暴風と花、食べ物などもそれなりに堪能してきました。また、夫婦で出たブルベでの初の DNF 。どのようにして力を合わせて DNF するのかを PDCA 出来たのはとてもいい経験になりました。

 ま、そんな顛末をちょいと語ってみたいと思います。来年出る方の参考に…ならないな、おそらく(苦笑





 何事もそうなのだが、成功か失敗かというのは、準備を行っているときにすでに決している。試験然り、仕事然り、ブルベ然り―おそらく恋愛だってそのうちの一つだろう。段取八分とは良くいったものだ。

 過去の経験から、距離や時間に応じた装備品の選択はできているつもりだ。今回は 200km の認定なので13時間30分の走行となる。途中で雨が降ることもあるだろうし、寒くなることもあるし、夕闇の中を走ることもある。いそいそと衣類、薬品、工具、その他もろもろを詰めるのもだいぶ手馴れてきた。
 本来的には、キューシートと呼ばれる進行表に従って走るのだが、今は便利な機械が安価に手に入る。etrex30 という GPS 機能を持ったデバイスに走行ルート、レシートチェックを行うPC、休憩するポイントを記録しておけば、まずルートから大きく外れることは、ない。

 装備、データ、衣類良し。段取八分ってんならここまではパーフェクト。残る準備はエンジン―そう、我々の体である。一番やっかいで、一瞬たりとも油断ができず、いつまでたってもコントロールしにくい肉体と精神のコンディション。

 私は12月の激務を抜け、正月もほとんど休めなかったものの、週平均 100km 程度は走ることができてる。ただまあ、一番ストレスがかかる「第二週」ということもあり、不機嫌に一言もしゃべらないような日が、あった。気分はあまり良くないし、精神状態に影響されやすい腸を持っているため、黄色信号と言ったところだ。
 一方、妻はどうか。
 最近職場が変わったばかりで疲れは毎日がピーク、ブルベ二日前には原因不明の体調不良で寝込む…とこちらも赤に近い黄色信号。「体調悪いってほどじゃないしー」とカラカラ笑っているのがせめてもの救いと言ったところか。

 二人とも「まずまず」と言ったところである。だいたい、ブルベを万全な精神状態・体調で迎えたことなんかなかったはず。遠征とはいえ、距離は 200km、メカトラブルでもなければ何が何でも走る距離でしょ、と車に乗り込み、遠征先の木更津に向かって東北道をひた走るのであった。



 夜の首都高、アクアラインから見える工場地帯にはしゃぎながら、木更津についたのは 0 時ごろ。

「いやいやいやいや…何この気温」
「あったけえ!風あってもこの暖かさかあ」

 ホテルに行く前に明日の朝食を手に入れようと近くのコンビニに車を降りた第一声は確かこうだった。仙台に比べて気温が高い。長袖シャツにセーター一枚でまったく寒くないとはどういうことだ。昨年3月の那珂川のブルベの時より暖かいんじゃないか。これなら完走にも弾みがつく。

 ホテルにチェックインしたのはブルベ当日の0045時頃。さっさとシャワーを浴び、明日の準備をちょっとだけして眠りについたのは1時ごろ。5 時間ほど睡眠がとれる計算になる。ふむ、準備は万端じゃないか…。


 そして、夜が明けた。


 うん、眠い


 暖房なんかつけたら暑くて寝られないだろうと思っていたのが敗因。肌寒さになんどか目を覚ましてしまったが、5 時間くらいは横になることができたんだからまあ問題はない。妻はと言えば自称「私のことはドアストッパーだと思って気にしないでください」スタイルのままベッドから起き上がらない。同じく眠いらしい。疲れもあってか、朝ごはんを途中で放棄するほど。

 さて、ゆっくりしてる場合じゃない。さっさと装備を着用してチェックアウト。袖ヶ浦海浜公園へ向かう。AJ 千葉のスタッフの皆さんへ萩の月を献上し、着ぐるみ姿のがくさんと少しお喋り…などしているうちに時間がバタバタと過ぎていき、気づけばもうブリーフィングの時間。ユーモアを交えた注意事項に場は一気に和む。キューシートを見るふりしながら他の人を観察。みんな速そう。うーん。





出走時間は 0810 時。車検を受け、いよいよスタート、と言うときに探していた方とお会いできた。宇都宮のブルベでお世話になったり Fleche 会場でお会いしたご夫妻。殿は我々が、いや我々がなどと漫才を繰り広げながら、ビンディングシューズをパチン。


 風が凄いため体感温度は低い…と思ったのは最初の 5km ほど。すぐにこの時期の東北ではありえない陽光が指しはじめ、身体が汗ばみ始めるものの、調子は良い。25km 程度でゆっくりと進み、最初の休憩ポイントで手袋を薄手のものにし、フェイスマスクを外す。

 前半は信号にとにかく捕まるため、暖かい風の中ゆったりゆっくりと PC1 を目指すことになる。平均速度は 17.5km 前後。時折走るスタッフカーと挨拶したり熟女バーの存在にびっくりしたりしながら平和に、のどかに、楽しく。こんなにふわっとしたブルベは未経験だ。楽しい。

 PC1 に到着し、買い物を終えたのは10:23。目標時刻より10分ほど遅れているが、貯金は40分ほどと悪くないペース。思わず近くに来た猫と戯れるくらいの余裕を見せながらサンドイッチをほおばる。


 トイレをすまし、ゆるゆると出発。このあたりから妻の調子がみるみる落ちていく。どうも食事をきちんと消化できないようだ。次の休憩ポイントであるシイタケ村の自販機までの坂でペースがさらに落ちて以来なかなか上がらない。毒づく回数も多い…が、だいたい彼女はこんな調子。そのうちスイッチが入ってするする進めるようになるのが常なので、特に心配はしていなかった。


 「ロングライドなんか二度としないっ!」
 「はっはっは」
 「今すぐやめたい!」
 「どうやって帰るの?」
 「漕げばいいんでしょあーもー!」

 犬も食わない会話をしながらゆるゆると坂を上る。狭い道のダウンヒルを堪能した後はまた昇り返し、また下る。下りはともかく、のぼりのペースが致命的に遅くなっている。これは困った。

 「休憩取りすぎかなー?」
 「そんなことないよー」
 「道の駅スルーする?」
 「うーん…」
 「少しだけ休憩するかー?」
 「はーい」

 下りもあって、少しペースは上向きになっていたため休憩をすることに。時間帯も時間帯だし、どうせ行列ができてるだろうと思ったお店には ― 誰も並んでいない。

 「すみません、どれくらいでできますか?」
 「2分もあればできますよ」
 「じゃ、じゃあください!」



 憧れのビンゴバーガー。しかし、そんなに時間がないことは知っている。本当なら味わいながら食べたいところだが、泣く泣く早食い。

 「なんでそんな食べれんの…私は食べれないなあ。」

 とあきれ顔の妻にクリームパンを押し付け、あっという間に完食。太田胃散を飲んでさくっと出発。

 ここから PC3 までは平坦路。風の影響がモロに出る区間ではあるが、ペースを上げることはできるはずだ。この日のために前を引く練習もしてきたし、とバックミラーをみると妻がついてこれていない。調子乗ってスピード出し過ぎたかな?と思うも、どうも様子がおかしい。

 「気持ち悪いし呼吸も苦しい」

 じゃあゆっくり行こうかね、とペースに合わせて行っても時速は 15km を下回るレベルになってきた。このペースじゃ時間が足りない。もちろん、ビンゴバーガーに手を出した私が悪いのだけど、 PC2 はギリギリ通過になってしまうと気ばかり焦る。ちょっとした坂では時速 7km を下回る。ヤバい。

 何とか妻のテンションを上げようにもどうしようもない。こちらは気ばかり焦る。笑いを顔に張り付けながら、心のなかは修羅場。だましだまし PC2 に到着したのは13:20、クローズ14分前。時間がないからレッドブル1本を買ってさあ行くぞ、と声をかけるとジト目で

「時間無いの?」

 と睨まれる。そりゃあまあ、ビンゴバーガーを思わず注文してしまった私が悪い。そりゃ怒るわな…と思ったりさまざまなことが頭の中を去来する。とにもかくにも出発したものの、妻の足が回らない。

 とうとう、

 「すとっぷー…」

 と言う声が聞こえ、停止。肺も苦しければ気持ちも悪くてどうしようもないとのこと。えぐえぐと泣く妻に声を掛けつつ、どうしようかなあと頭の中がぐるぐるまわる。

 「とにもかくにも通過チェックまでは行こうよ、あと 5km もないしさ」
 「…もう閉まってるよ。間に合わないよ。」
 「通過チェックにクローズは無いってば」

 と、我々をパスしていく人が一人。

 「な?まだ最後尾じゃないんだよ?(おそらく嘘」
 「まだ後ろ人いるんだ…」
 「そうそう、だからまだまだ間に合うってば。今のペースなら余裕余裕!(これも嘘」

 再びサドルにまたがる妻を見ながら、DNF する時のことを考え始める。いやまて、通過チェックを過ぎて暫く行けば追い風になるし、だいたい彼女は泣いてからが強いじゃないか。いやしかし…。

 ビンディングをバチンとはめて、気持ちを切り替える。今はともかく進めることに感謝すべき。

 だましだまし通過チェック会場へ。スタッフの皆さんが心配そうな顔でこちらを見ている。大丈夫ですかの声になんと答えていいかわからず苦笑する。スタンプをいただき、イチゴをいただきちょっとリフレッシュ。妻は気持ち悪さから食べれなかった。うん、これは、ヤバい。

 それでも何とか再スタート。確かこの辺りはちょうど電車がない区間だった。このまま千倉近くまで走れればよし、ダメなら来た道を戻って館山から行けばいいか?おっと、また千切れそうになってる―などとぐるぐるぐるぐる考え事をしてたらミスコース。500m 位向かい風の中を戻ってコースに復帰。ん?向かい風?ってことはここから追い風だ!

 追い風だよ!と声をかけても反応はなく、速度も上がらない。途方に暮れた時に追い打ちの雨…だけではなく、氷の粒まで落ちてくる。

 たまらず民家の軒先へ雨宿り。レインウェアに着替え、すたーと。ペダルを回したり、止まったり。菜の花の横に砂がたまっているのをよけたり、砂に突入したり。雨は徐々にひどくなってくる。いつもならこのまま突っ切るところだけど、雨宿りすべきだろう。

 コースから少し外れているセブンイレブン白浜滝口店で休憩。暖かいお茶を買って暖を取らせる。もうちょっとで次の休憩ポイントである道の駅に着くはずだ。時速 15km/h を維持すればまだ間に合う。少し休憩しただけで大分回復はしているようだけど、今度は震えはじめているが、これはまあ、食事とるなり暖を取るなりすれば何とかなるだろう。つまり、完全に走れないほどの消耗では、ない。

 口に出したらおそらくそうなっちゃうんだろうな。

 「ディ…」

 走れるうちに決断をしないことには帰れなくなる。そうなったらもう、ランドヌールじゃない。単なる負け犬だ。

 「DNF を真面目に検討する必要がある」
 「うん…」

 脱出経路としては、86号線を北上して館山に向かうプチ山岳コース、あるいは410号線を戻る向かい風な平地コース、追い風を利用して410号線を先に進む平地コース。

 「でも一人ならイケるんじゃないの?」
 「おそらく余裕だけど、それじゃあ意味がないよ。」
 「でも…」
 「何のために夫婦で出てるのさ。一人だけ完走しても得られるものは俺にはないよ。いいね?」
 「うん、わかった。」

 雨がしとしと降り続ける中、スタッフへ連絡。脱出経路もあるので大丈夫ですと伝えてDNFを宣言。102km 地点、6.5 時間で我々のブルベは終了したのであった。

 さて、とにもかくにも帰らにゃならん。向かい風コースは論外。追い風に乗るのは未練たらたら過ぎる上に距離が一番長い。日が暮れる前にパッキングを終えたいとなれば、86号線を北上するしかない。たった 12km。通行止めがあるかもしれないという不安はよぎったが、ダメでも 410 号線に戻ってくることはできる。

 「雨が収まったら、86号線を 12km ほど北上すると館山駅ってのがあって、そこから袖ヶ浦。」
 「わかったー」
 「ちょっと山だけど、まあ、東北に比べたら丘よ」
 「そういうのはだいたい嘘だもん…」
 「 お、おう… 」

 とにかく脱出だ。暖かいものを食べてホッカイロを買って、目指すは一路館山駅。こういう時、etrex30 のナビ機能はとても便利である。最短ルートを提示してくれることもあってあっという間に館山駅。輪行が大の苦手な二人があーでもないこーでもない言いながら 45 分ほどかかってパッキングに成功。




 無情にも、切符を買ったと同時に電車は出発。次は…一時間後か。

 「やっぱり悔しいなあ」
 「そう?良いブルベだったよ。ああ、初 DNF おめでとう」
 「うー」
 「ちゃんと輪行して誰にも迷惑かけずに帰れるってのはすごいことじゃん」
 「…まあ、そうだけどさ」

 1時間電車を待って、一時間半ほど電車に揺られて、どうにか袖ヶ浦駅へ帰って。唖然とするくらいの強風の中輪行袋の袋詰めに四苦八苦して海浜公園へ向かう。ちゃんと 200km 走って帰ってくる人たちに「お疲れ様でしたー」と言いながらスタッフの皆さんがまつスタート地点へ。息ができないほどの向かい風や横風に最後まで苦しめられながらどうにか到着。

 「DNF しまして戻ってきましたー」
 「おお!良く無事で戻ってきてくれました。ありがとうございます!」

 このセリフを聞いて、うん、帰ってこれたし、やり切れたんだなあとじんわり。いろいろな人に心配をかけたけれど、何とか自分たちだけで処理ができて、なんとか帰って来れたし、二人とも無事だ。どんな結果でも、待っててくれる人がいて、心配してくれる人がいて。完走できた人もできなかった人も終わってしまえばきつかったねえなんて話で盛り上がれる。こんなにうれしいことは、マンガのセリフじゃあないけれど、無いよね。

 自分たちの自転車を片付けて、改めて挨拶してホテルへ。反省会をしなくっちゃね。こんなに楽しいブルベを運営してくれたスタッフ、一緒に走ってくれた参加者の皆さんには本当に感謝の気持ちでいっぱい。良いブルベだったし、良い DNF だった。来年こそ、夫婦二人で完走して得意げに言いはなってみたい

 「夫婦ブルベ?楽しいですよマジで。」

 

2 件のコメント:

  1. 夫婦ブルベの初DNF、お疲れ様でした。DNFとは言え、お二人で羨ましい限りです。
    楽しさは倍になり、苦しさは半分になる二人連れに憧れ、うちでも誘ってはみましたが・・・、全く無理のようです。
    次は是非ともお二人で完走して下さい。応援してます(^_^;

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  2. お疲れ様でした&残念でした~。
    でも真冬にブルベ行くだけでもすご~~い!もっぱらオコタミカンしてます。
    家内は全く自転車には興味がないので羨ましいです。

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